体操と裁判

体操経験のある弁護士が、裁判になった事案の検討を通じて、体操指導者の注意義務について考えるブログです。

⑩高校生が、授業中、マット運動のロンダート~バク転~バク転の練習中、傷害を負った事案(責任肯定)

⑩札幌地判平成13年5月25日(判タ1114号173頁)

 

1.事案の概要
 平成8年5月24日、公立高校2年生のXは、体育の授業中、ロンダート~バク転~バク転を実施した際、セーフティーマットに後頭部から落下し、頸髄損傷の傷害を負った。

 裁判所は、Y教諭の過失を認めつつ、高校生Xにも過失があるとして4割の過失相殺をした上で、知事に対する損害賠償請求を認めた。

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⑨高校生が、部活動で、跳馬の前方抱え込み宙返りの練習により、傷害を負った事案(責任肯定)

⑨横浜地判平成9年3月31日(判時1631号109頁)

 

1.事案の概要

 昭和62年11月15日、高校1年生であったXは、部活動で、跳馬の前転跳び前方抱込み宙返りの練習時に、回転途中でマットに頭から落下し、頸髄損傷等の傷害を負った。

 裁判所は、日頃練習に立ち会い、高校生Xの習熟度を把握しておくことはもとより、頭部から落下する危険があることを指摘し、事故防止のため、回転を途中で止めたり、体を抱え込む姿勢を崩したりしないよう指導する義務があったが、これを怠ったとして、顧問Aの過失を肯定した。

(なお、当該高校は県立高校で、損害賠償責任を負ったのはY県のみ)。 

 他方で裁判所は、高校生Xにも過失があるとし、40%の減額を認めた。

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⑧高校生が、部活動で、ロイター板を使用した前方宙返りの練習により、傷害を負った事案(責任肯定)

⑧鹿児島地判平成9年1月27日(判例地方自治168号71頁)

 

1.事案の概要

 平成元年1月14日、高校1年生であったXは、部活動で、ロイター板を用いた前方宙返りの練習時に、回転しすぎマットに頭から落下し、頚椎骨折等の傷害を負った。

 裁判所は、初心者が危険性に思い至らず、興味本位で上記練習に加わる可能性があることを予見できたにもかかわらず回避措置をとらなかったことをもって、顧問Aの過失を肯定した。

(なお、当該高校は県立高校で、損害賠償責任を負ったのはY県のみ)。 

 他方で裁判所は、Xにも過失があるとし、75%の減額を認めた。

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⑦高校生が、部活動で、ミニトランポリンの前方二回宙返りの練習により、傷害を負った事案(責任肯定)

⑦浦和地判平成3年12月13日(判時1435号109頁)

 東京高判平成7年2月28日(判タ890号226頁)

 

1.事案の概要

 昭和60年7月20日、高校2年生であったXは、部活動で、ミニトランポリンを用いた前方二回宙返りの練習時に、開くタイミングが早すぎマットに頭から落下し、頚椎脱臼等の傷害を負った。

 裁判所は、(一審、二審とも、)当該体操部の状況からして、部員が危険性の高い技の練習を試み、重大な傷害事故が発生する危険性があることを予見できたにもかかわらず回避措置をとらなかったことをもって、顧問Aの過失を肯定した。

(なお、当該高校は県立高校で、損害賠償責任を負ったのはY県のみ)。 

 他方で裁判所は、Xにも過失があるとし、一審は6割、二審は4割の減額を認めた。

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⑥中学生が、スポーツクラブで、鉄棒のトカチェフの練習により、傷害を負った事案(責任肯定)

⑥東京地判平成3年10月18日(判時1406号51頁)

 

1.事案の概要

 昭和62年10月17日、中学1年生のXは、所属する体操クラブで、指導者Yの補助の下、鉄棒のトカチェフ(背面開脚後ろ飛び越し)の練習時に、大腿部を鉄棒のバーに接触させ、鉄棒直下に後頭部から落下し、頚椎脱臼等の傷害を負った。

 裁判所は、

①当日のXの疲労状況(トカチェフの練習を実施したこと)や、

②指導者Yの練習指導方法(中学生Xの実力に合わせた段階的練習)に問題はないとしつつ、

③指導者Yが必要な補助措置を行ったとして、指導者Yの過失を肯定した。 

 他方で裁判所は、有力選手である中学生Xが自発的に練習を行ったこと(危険の引き受け)から、過失相殺に準じ2割の減額を認めた。

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⑤ 中学生が、授業で、跳び箱の前方倒立回転跳びの練習により、傷害を負った事案(責任肯定)

⑤静岡地富士支部判平成2年3月6日(判時1351号126頁) 

 

1.事案の概要
 昭和59年2月23日、中学2年生のXは、体育の授業中、跳び箱(横置き4段、高さ約88cm)で前方倒立回転跳びを実施した際、跳び箱上部前面に頭頂部付近をぶつけ、ほぼ垂直に後方の安全マット上に落下し、第6頸髄損傷等の傷害を負った。

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④中学生が、授業で、跳び箱の前方倒立回転跳びの練習により、傷害を負った事案(責任肯定)

④鹿児島地判平成元年1月23日(判タ693号169頁)

 

1.事案の概要
 昭和58年11月11日、中学2年生のXは、体育の授業中、跳び箱運動(4段、高さ約73cm)の前方倒立回転跳びを実施した際、跳び箱斜め前方に正座の変形したような態勢で落下し、右下大腿骨骨折、右足関節外傷性脱臼の傷害を負った。

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