体操と裁判

体操経験のある弁護士が、裁判になった事案の検討を通じて、体操指導者の注意義務について考えるブログです。

2015-01-01から1年間の記事一覧

③高校生が、部活動で、鉄棒の両脚中抜き下りの練習により、傷害を負った事案(責任肯定)

③浦和地判昭和56年8月19日(判時1023号92頁) 1.事案の概要 昭和41年8月10日、高校1年生のXは、他校での練習中、鉄棒の両脚中抜き下りを実施する直前、鉄棒から手が離れマット上に頭部から落下し、頸髄損傷等の傷害を負った。

閑話休題(指導者の注意義務を考慮する上での一般的要素)

1.閑話休題 そもそも指導者の責任は、その指導者に「注意義務」があり、その「注意義務」を怠った場合に認められることになります。 指導者の注意義務の内容は、事案毎に個別具体的に設定されることになりますが、一般的なポイントを整理してみたいと思い…

②高校生が、部活動で、鉄棒の後方屈伸二回宙返り下りの練習により、傷害を負った事案(責任否定)

②広島地判昭和53年5月23日(判時911号148頁) 1.事案の概要 昭和47年8月18日、高校3年生のXは、Y教諭の出身大学で鉄棒の後方屈伸二回宙返り下りを練習を行い、ウレタンマット上に頭部から落下し、頸髄損傷等の傷害を負った。 裁判所は…

①高校生が、部活動で、吊り輪の後方二回宙返り下りの練習により、傷害を負った事案(責任肯定)

①山形地判昭和52年3月30日(判時873号83頁) 1.事案の概要 昭和43年7月1日、高校1年生のXは、部活動で、吊り輪の後方ニ回宙返り下りの練習を行い、床に敷かれたセーフティ・マット上に頭部から落下し、頚椎脱臼の傷害を負った。 裁判所は…

検討する裁判例

体操による事故について、私が確認することができた裁判例は次の13件で、指導者の注意義務違反を肯定した事案が12件、否定した事案が1件です(H30.1.17時点)。 いずれも、中高生が頭部又は首を強打し重い傷害が残った事案という点で共通します。 以後…

ご挨拶と本ブログの目的

本ブログでは、体操経験のある弁護士が、事故が起きて裁判となった事案を通じて、体操指導者の注意義務について考えてみます。 体操は怪我の多いスポーツです。 もちろん、正しく練習すれば大きな怪我には至らない場合がほとんどですが、宙返りなど頭を下に…