体操と裁判

体操経験のある弁護士が、裁判になった事案の検討を通じて、体操指導者の注意義務について考えるブログです。

⑥中学生が、スポーツクラブで、鉄棒のトカチェフの練習により、傷害を負った事案(責任肯定)

⑥東京地判平成3年10月18日(判時1406号51頁)

 

1.事案の概要

 昭和62年10月17日、中学1年生のXは、所属する体操クラブで、指導者Yの補助の下、鉄棒のトカチェフ(背面開脚後ろ飛び越し)の練習時に、大腿部を鉄棒のバーに接触させ、鉄棒直下に後頭部から落下し、頚椎脱臼等の傷害を負った。

 裁判所は、

①当日のXの疲労状況(トカチェフの練習を実施したこと)や、

②指導者Yの練習指導方法(中学生Xの実力に合わせた段階的練習)に問題はないとしつつ、

③指導者Yが必要な補助措置を行ったとして、指導者Yの過失を肯定した。 

 他方で裁判所は、有力選手である中学生Xが自発的に練習を行ったこと(危険の引き受け)から、過失相殺に準じ2割の減額を認めた。

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