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体操と裁判

体操経験のある弁護士が、裁判になった事案の検討を通じて、体操指導者の注意義務について考えるブログです。

閑話休題(指導者の注意義務を考慮する上での一般的要素)

1.閑話休題

そもそも指導者の責任は、その指導者に「注意義務」があり、その「注意義務」を怠った場合に認められることになります。

 指導者の注意義務の内容は、事案毎に個別具体的に設定されることになりますが、一般的なポイントを整理してみたいと思います。

 

2.ポイント

①演技者の年齢

一般に、演技者の年齢が高ければ指導者の注意義務は低く、

指導を受ける演技者の年齢が低ければ指導者の注意義務は高くなります。

年齢が高いほど、自ら判断する能力が高くなってきますので、事故が起きた場合であっても自己責任が認められやすくなるためです。

 

例えば、大学生や社会人であれば、その練習がどの程度の危険を伴うものであり、自分にとって実施可能かを判断する能力が高くなるので、指導者が常に見ていなかったとしても責任が認められるとは限りませんが、

高校生以下の場合には、そのような判断をする能力に乏しく、無理をしてしまいやすいので、指導者には演技者が無理をしないよう自ら監督したり、監督できる状況を整えておく必要が生じやすくなります。

 

 

②演技者の技能

演技者の技能が高ければ指導者の注意義務は低く、

演技者の技能が低ければ指導者の注意義務は高くなります。

技能が高いほど、危険な練習を実施することが可能で、また、自ら判断する能力も高くなってきますので、事故が起きた場合であっても自己責任が認められやすくなるためです。

 

例えば、全国大会に出場するような実力者であれば、その技を実施するためにどのような注意を払えばよいか自ら判断することができるようになってくるため、普段と違う環境で練習して事故が起きたとしても指導者に責任が認められるとは限りませんが、

初心者にはそのような判断はできませんので、ピットなどの環境で練習させたり、十分な補助を付けるなどの注意を払う必要が生じます。

 

 

3.体操指導者の「注意義務」の一般化

注意義務自体は事案ごとに個別具体的に設定されるのですが、一般化を試みるならば、体操指導者には、「その演技者にとって、その練習を行うことが適切である」といえる状況を確保する義務があると考えます。

 

①演技者の年齢や、②演技者の技能は、その注意義務の高低を考慮する際の一般的なポイントといえるでしょう。

 

なお、「演技者の安全を確保する義務」は、指導者等の「立場」で決まるため、お金儲けを目的としていないボランティアベースであっても認められます。

もっとも、対価を受領している場合の方が、義務の程度が高くなる可能性は高いといえるでしょう。

 

次回からは、また裁判例の検討を進めたいと思います。