体操と裁判

体操経験のある弁護士が、裁判になった事案の検討を通じて、体操指導者の注意義務について考えるブログです。

検討する裁判例

 体操による事故について、私が確認することができた裁判例は次の13件で、指導者の注意義務違反を肯定した事案が12件、否定した事案が1件です(H30.1.17時点)。

 いずれも、中高生が頭部又は首を強打し重い傷害が残った事案という点で共通します。

 以後、古い順に一つずつ検討します。 

 

①山形地判昭和52年3月30日(判時873号83頁)

 高校生が、部活動で、吊り輪の後方二回宙返り下りの練習により、傷害を負った事案(責任肯定

 

②広島地判昭和53年5月23日(判時911号148頁)

 高校生が、部活動で、鉄棒の後方屈伸二回宙返り下りの練習により、傷害を負った事案(責任否定

 

閑話休題(指導者の注意義務を考慮する上での一般的要素)

 

③浦和地判昭和56年8月19日(判時1023号92頁)

 高校生が、部活動で、鉄棒の両脚中抜き下りの練習により、傷害を負った事案(責任肯定

 

④鹿児島地判平成1年1月23日(判タ693号169頁)

 中学生が、授業で、跳び箱の前方倒立回転跳びの練習により、傷害を負った事案(責任肯定

 

⑤静岡地富士支部判平成2年3月6日(判時1351号126頁)

 中学生が、授業で、跳び箱の前方倒立回転跳びの練習により、傷害を負った事案(責任肯定

 

⑥東京地判平成3年10月18日(判時1406号51頁)

 中学生が、スポーツクラブで、鉄棒のトカチェフの練習により、傷害を負った事案(責任肯定

 

⑦浦和地判平成3年12月13日(判時1435号109頁)

 東京高判平成7年2月28日(判タ890号226頁)

 高校生が、部活動で、ミニトランポリンの前方二回宙返りの練習により、傷害を負った事案(責任肯定

 

⑧鹿児島地判平成9年1月27日(判例地方自治168号71頁)

 高校生が、部活動で、ロイター板を使用した前方宙返りの練習により、傷害を負った事案(責任肯定

 

⑨横浜地判平成9年3月31日(判時1631号109頁)

 高校生が、部活動で、跳馬の前方抱え込み宙返りの練習により、傷害を負った事案(責任肯定

 

⑩札幌地判平成13年5月25日(判タ1114号173頁)

 高校生が、授業中、マット運動のロンダート~バク転の練習中、傷害を負った事案(責任肯定

 

⑪福岡地小倉支部判平成17年6月28日(D1-LAW 判例ID 28131252)

 高校生が、部活動紹介で、マット運動のロンダート~バク転~バク転の演技中、傷害を負った事案(責任肯定

 

⑫大阪地判平成22年9月3日(判時2102号87頁)

 高校生が、部活動で、平行棒の後方抱え込み二回宙返り下りの練習中、傷害を負った事案(責任肯定

 

<H28.10.16追記>

⑬ 高校生が、部活動で、鉄棒の通し練習中、前方車輪で回転が足りず逆手のまま振り戻った後前方へ投げ出され、傷害を負った事案

 大阪地判平成28年6月28日(Westlaw文献番号20156WLJPCA06286003)(責任否定

 <H30.1.17追記>

 大阪公判平成29年12月15日(判例集未掲載)(責任肯定

 報道によると、⑬事件について指導者の責任を肯定する高裁判決が出て、確定した模様。