体操と裁判

体操経験のある弁護士が、裁判になった事案の検討を通じて、体操指導者の注意義務について考えるブログです。

⑫高校生が、部活動で、平行棒の後方抱え込み二回宙返り下りの練習中、傷害を負った事案(責任肯定)

⑫大阪地判平成22年9月3日(判時2102号87頁) 1.事案の概要 平成17年5月24日、高校2年生だったXは、部活動で、平行棒の後方抱え込み二回宙返り下りの練習時に、前方に飛び出す形で前のめりに足から着地し、前方に倒れて体育館の床に前頭部…

⑪高校生が、部活動紹介で、マット運動のロンダート~バク転~バク転の演技中、傷害を負った事案(責任肯定)

⑪福岡地小倉支部判平成17年6月28日(D1-LAW 判例ID 28131252) 1.事案の概要 平成12年10月28日、県立A高校の2年生Xは、男子新体操部の活動紹介の一環として、体育館のステージ上でロンダート~バク転~バク転を実施した際、…

⑩高校生が、授業中、マット運動のロンダート~バク転~バク転の練習中、傷害を負った事案(責任肯定)

⑩札幌地判平成13年5月25日(判タ1114号173頁) 1.事案の概要 平成8年5月24日、公立高校2年生のXは、体育の授業中、ロンダート~バク転~バク転を実施した際、セーフティーマットに後頭部から落下し、頸髄損傷の傷害を負った。 裁判所は…

⑨高校生が、部活動で、跳馬の前方抱え込み宙返りの練習により、傷害を負った事案(責任肯定)

⑨横浜地判平成9年3月31日(判時1631号109頁) 1.事案の概要 昭和62年11月15日、高校1年生であったXは、部活動で、跳馬の前転跳び前方抱込み宙返りの練習時に、回転途中でマットに頭から落下し、頸髄損傷等の傷害を負った。 裁判所は、…

⑧高校生が、部活動で、ロイター板を使用した前方宙返りの練習により、傷害を負った事案(責任肯定)

⑧鹿児島地判平成9年1月27日(判例地方自治168号71頁) 1.事案の概要 平成元年1月14日、高校1年生であったXは、部活動で、ロイター板を用いた前方宙返りの練習時に、回転しすぎマットに頭から落下し、頚椎骨折等の傷害を負った。 裁判所は、…

⑦高校生が、部活動で、ミニトランポリンの前方二回宙返りの練習により、傷害を負った事案(責任肯定)

⑦浦和地判平成3年12月13日(判時1435号109頁) 東京高判平成7年2月28日(判タ890号226頁) 1.事案の概要 昭和60年7月20日、高校2年生であったXは、部活動で、ミニトランポリンを用いた前方二回宙返りの練習時に、開くタイミ…

⑥中学生が、スポーツクラブで、鉄棒のトカチェフの練習により、傷害を負った事案(責任肯定)

⑥東京地判平成3年10月18日(判時1406号51頁) 1.事案の概要 昭和62年10月17日、中学1年生のXは、所属する体操クラブで、指導者Yの補助の下、鉄棒のトカチェフ(背面開脚後ろ飛び越し)の練習時に、大腿部を鉄棒のバーに接触させ、鉄棒…

⑤ 中学生が、授業で、跳び箱の前方倒立回転跳びの練習により、傷害を負った事案(責任肯定)

⑤静岡地富士支部判平成2年3月6日(判時1351号126頁) 1.事案の概要 昭和59年2月23日、中学2年生のXは、体育の授業中、跳び箱(横置き4段、高さ約88cm)で前方倒立回転跳びを実施した際、跳び箱上部前面に頭頂部付近をぶつけ、ほぼ垂直…

④中学生が、授業で、跳び箱の前方倒立回転跳びの練習により、傷害を負った事案(責任肯定)

④鹿児島地判平成元年1月23日(判タ693号169頁) 1.事案の概要 昭和58年11月11日、中学2年生のXは、体育の授業中、跳び箱運動(4段、高さ約73cm)の前方倒立回転跳びを実施した際、跳び箱斜め前方に正座の変形したような態勢で落下し、…

③高校生が、部活動で、鉄棒の両脚中抜き下りの練習により、傷害を負った事案(責任肯定)

③浦和地判昭和56年8月19日(判時1023号92頁) 1.事案の概要 昭和41年8月10日、高校1年生のXは、他校での練習中、鉄棒の両脚中抜き下りを実施する直前、鉄棒から手が離れマット上に頭部から落下し、頸髄損傷等の傷害を負った。

閑話休題(指導者の注意義務を考慮する上での一般的要素)

1.閑話休題 そもそも指導者の責任は、その指導者に「注意義務」があり、その「注意義務」を怠った場合に認められることになります。 指導者の注意義務の内容は、事案毎に個別具体的に設定されることになりますが、一般的なポイントを整理してみたいと思い…

②高校生が、部活動で、鉄棒の後方屈伸二回宙返り下りの練習により、傷害を負った事案(責任否定)

②広島地判昭和53年5月23日(判時911号148頁) 1.事案の概要 昭和47年8月18日、高校3年生のXは、Y教諭の出身大学で鉄棒の後方屈伸二回宙返り下りを練習を行い、ウレタンマット上に頭部から落下し、頸髄損傷等の傷害を負った。 裁判所は…

①高校生が、部活動で、吊り輪の後方二回宙返り下りの練習により、傷害を負った事案(責任肯定)

①山形地判昭和52年3月30日(判時873号83頁) 1.事案の概要 昭和43年7月1日、高校1年生のXは、部活動で、吊り輪の後方ニ回宙返り下りの練習を行い、床に敷かれたセーフティ・マット上に頭部から落下し、頚椎脱臼の傷害を負った。 裁判所は…

検討する裁判例

体操による事故について、私が確認することができた裁判例は次の13件で、指導者の注意義務違反を肯定した事案が12件、否定した事案が1件です(H30.1.17時点)。 いずれも、中高生が頭部又は首を強打し重い傷害が残った事案という点で共通します。 以後…

ご挨拶と本ブログの目的

本ブログでは、体操経験のある弁護士が、事故が起きて裁判となった事案を通じて、体操指導者の注意義務について考えてみます。 体操は怪我の多いスポーツです。 もちろん、正しく練習すれば大きな怪我には至らない場合がほとんどですが、宙返りなど頭を下に…